研究者 文献紹介

究者 文献紹介

関節リウマチにおける間質性肺疾患の急性増悪:臨床的特徴と予後先生
論文タイトル
関節リウマチにおける間質性肺疾患の急性増悪:臨床的特徴と予後
論文著者
Izuka S, Yamashita H, Iba A, Takahashi Y, Kaneko H. Acute
論文の概要

関節リウマチにおける間質性肺疾患(RA-ILD)における急性増悪は、生存率が低い重症病態である。本研究の要点は、①165人のRA-ILD患者のうち、30人(22.2%)がRA-ILD急性増悪を発症し、②高分解能CT(HRCT)で通常型間質性肺炎(UIP)パターンが、RA-ILD急性増悪と関連し、③そのうち死亡に関しては、UIPパターンと、メトトレキサート(MTX)“非“使用患者が関連していた、というものである。

・RA-ILD急性増悪の臨床的特徴と予後と予後予測因子
対象は、2007年から2019年に国立国際医療研究センター病院膠原病科に通院歴のあるRA患者1325例とした。その中から、RA-ILD患者を抽出し、RA-ILD急性増悪に関与する因子と、死亡に至る因子・予後について検証した。
結果は、1325例のRA患者のうち、165例(12.5%)がHRCTでRA-ILDと診断され、観察期間中、RA-ILD165例のうち、30例(18.2%)がRA-ILD急性増悪をきたし、そのうち、13例(43.3%)が死亡した。なお、RA-ILD急性増悪をきたした患者への治療としては、基本的にほぼ全ての例でステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン500-1000mg)の後に、内服ステロイドへの切り替えを行い、シクロホスファミド静注療法やカルシニューリン阻害薬併用を行うことが一般的であった。

・HRCTでのUIPパターンが急性増悪と関連
単変量解析では、UIPパターンが急性増悪群に多い傾向が見られた(56.7% vs 39.2%, P = 0.10)。MTX使用に関しては、急性増悪群と、急性増悪を発症しなかった群とで、MTX使用歴(73.3% vs 72.6%, P > 0.99)、およびMTX用量(8 mg/週(IQR 6–10) vs 6 (4–10), P = 0.20)に差はなかった。なお、RA-ILD自体の発症リスクとして報告されている、男性、喫煙歴、RF値、ACPA値は、“急性増悪”とは関連していなかった。年齢、MTX使用で多変量解析を行うと、UIPパターンはオッズ比2.55 (95% 信頼区間(CI)1.00-5.24), P = 0.049)と急性増悪との関与が示唆された。

・HRCTでのUIPパターン、MTX非使用が急性増悪での死亡と関連
RA-ILD急性増悪をきたした患者において死亡例と生存例を比較したところ、死亡例は年齢が高く(80 歳 (IQR 78–85) vs 70 歳(66–74), P = 0.003)、MTX非使用者が多かった(23.1%vs 70.6%, P = 0.025)。Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行ったところ、UIPパターンがハザード比4.67 ((95%CI 1.02, 21.45), P = 0.048)で死亡に関連し、MTXは逆に生存に関連していることが判明した(ハザード比 0.16 (95% CI 0.04, 0.72; P = 0.02) 。

・RA-ILD急性増悪の生存率:72.1%(30日時点)
RA-ILD急性増悪の生存率は、発症30日時点で72.1% (95% CI 0.52-0.85) 、60日時点で62.2% (95% CI 0.40-0.78)と、予後不良病態であることがわかった。

著者より一言

本研究は私の初めての臨床研究論文の一つでした。結果をまとめるにあたり、自施設の先生方には多大なるご指導をいただきました。
また、論文発表前にEUALRやACRなどの国際学会で自身の研究について積極的に議論することで、研究をブラッシュアップすることができ、最終的にpublishするに至りました。
私は現在大学院に進学し基礎研究・translational researchをメインに行なっておりますが、臨床経験から想起される課題を大切にし、これからも積極的に世界各地のRheumatologistと交流し、現在取り組んでいる研究を、より患者さんへ還元可能な意義のあるものに仕上げたいと思っております。

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