関節リウマチ(RA)関節にはリンパ濾胞形成に重要なケモカインCXCL13を産生するCD4 T細胞分画が存在するが、これまで知られていたヘルパーT細胞細胞分画との関係は明らかでなかった。表面マーカーを確認したところ、CXCL13を産生する分画はPD-1+CD69+の表現型を示すTCR-αβ CD4陽性T細胞であった(図1)。RA関節CD4陽性T細胞におけるIFNγ、IL-17、CXCR5の発現はCXCL13と排他的で、RA関節PD-1+CXCL13+CD4 T細胞はTh1, Th17, Tfh細胞とは別個の分画であることを示唆した。扁桃に存在するPD-1+CXCR5+Tfh細胞はCXCL13を産生することが知られており、扁桃Tfh細胞とRA関節CXCL13+CD4T細胞の間でTfh細胞のSignatureであるIL-21、ICOS,、BCL6の発現を比較したところ、IL-21はTfh細胞と同等に発現しICOSは発現するものの扁桃Tfh細胞より低発現であった。さらにTfh細胞の責任転写因子であるBCL6の発現は認めなかった。この事から、RA関節に存在するCXCL13+CD4 T細胞はTfh細胞とある程度類似するものの、Tfh細胞とは異なった細胞であると考えられた。またCXCL13の産生とRA病態に関わるTNFやIL-6などの炎症性サイトカインの関係を解析したところ、RA関節CD4 T細胞によるCXCL13の産生はこれらの炎症性サイトカインの存在下で1週程継続し、フレアアップした後に局所の炎症が持続するRA病態に近い動態を示すことが明らかになった。これらのことから、RA関節に存在するPD-1+CXCL13+CD4 T細胞は既存のヘルパーT細胞とは異なった分画で、炎症局所においてCXCL13を介して異所性リンパ濾胞の形成に関与しTfh細胞に類似した機能を発揮する細胞と考えられた。
少し前の論文ですが、研究の道に専念するきっかけとなった論文ですのでご紹介いたします。マウスではTh17細胞の研究をしていましたが(J Exp Med 204(12);2803-12, 2007)、九州大学の山田久方先生の関節リウマチ(RA)関節でTh17が減少している報告をきっかけに(Ann Rheum Dis. 67(9):1299-304, 2008)、ヒトRAにおけるCD4陽性T細胞の作用機序にはTh17と別の側面があるのではと思い行った研究です。当初は手術や外来など臨床業務の合間に研究を行っており、切りためておいた滑膜組織切片を週末に様々な抗体で多重蛍光免疫染色していました。RA滑膜組織にはどうやって異所性リンパ濾胞ができるのだろうと考え、リンパ節では濾胞性樹状細胞が出すCXCL13をT・B細胞とともに染めたところRA滑膜ではCXCL13がT細胞に局在する像が得られて大変興奮したことを覚えています(図1)。T細胞がCXCL13を発現することは2008年に報告されていましたが(Arthritis Rheum. 58(11):3377-87,2008)、さらに深く研究する意味のある細胞だと考え臨床から京都大学 創薬医学融合拠点に移り研究に専念させていただきました。IFNγやIL-17とCXCL13の発現が独立していることや、炎症性サイトカインがCXCL13産生の関与することなどを示すことで、幸運にもpublishすることができました。精力的に実験してくださった小林志緒先生(現アリゾナ大学)、検体にご協力いただいた整形外科、リウマチセンターの皆様、ご指導いただいた先生方に御礼申し上げます。研究技術の進歩によりヒト免疫研究でも様々な解析ができるようになってきました。現在は上野英樹教授のもとでヒト免疫学の進歩に少しでも貢献できればと考えヒト免疫の研究を継続しております。